2018年度 川崎支部

川崎支部 2019年1月例会の報告

  • 日時  2019126日(土) 15:00
  • 場所 法政大学第二中・高等学校社会科準備室

参加者は9名。

 

1.OKさん「高校選択・授業実践 まちづくりを考える」

・高校三年生を対象にした選択授業の実践報告。報告者の問題意識として、地域を「定点」ではなく「地帯」として把握させること、都市問題を考えるなかで田村明さんの一連の著作に感銘を受けたとのことです。

・実際の授業を再現しながらの報告で、コペンハーゲンのまちづくり(都市デザイン家のヤン・ゲール)、日本の都市計画の特徴、1990年代以降のまちづくりの課題などについて、都市の歴史をしっかりとふまえながら考えるものでした。夏休み課題として、「私の街の『まちづくり』」レポートが課されます。多摩ニュータウン(高齢化、孤独死)、イギリスの田園都市(職住一体)と田園調布(職住分離)との相違、グリーンベルト(東京緑地計画と防空法)、私鉄と遊園地など、さまざまな事例を紹介され、興味深い内容でした。「まち」は歴史性の集積である、との言葉にあるように、現在の課題について歴史的背景や経緯をふまえた実践であり、その重要性を再確認する内容でした。

・課題としては、生徒の調査・発表に生徒自身の社会参加の視点をどう組み込むかなど。活発な話し合いになりました。

 

2.NYさん「中学公民・授業実践 広場・公園ってどんなところ?」

・唐木清志『子どもの社会参加と社会科教育』で示された日本型サービスラーニングの必要条件(地域社会の課題の教材化、プロジェクト型の学習を組織、「振り返り」の重視、学問的な知識・技能を習得し活用する場面を設定、地域住民との協働)をふまえての実践報告でした。

・広場や公園での経験を幼少期から振り返り、ルール(掲示されたもの)の理由や疑問点の話し合い、夏休みの現地調査とそのシェア、改善案の検討と提案などを行うとともに、行政や自治会長さんへの取材などを通し、今後は地元のイベントにも参加する予定とのことでした。

・報告者からは、課題として改善提案に対しての「渋い反応」など、子どもたちが変えたいと考えた課題の達成の難しさ。「公園」という公共の場における責任の所在、ルール設定の範囲や権限。次年度以降の生徒に送られる課題をどうつなげていくかが示されました。

・質疑では、イベントの企画や参加だけでは「解決」しないという問題。ルールを変えることを授業の目的にしてしまうと、結果的に上手くいかずに挫折感しか残らないのではないか。まちづくり=コミュニティづくりであるが、実際には人間関係ふくめて難しいことが多い、校則とかを事例にした方がよいのでは等々の意見があがりました。

 

3.次回以降

日程は未定ですが、mlでも紹介されたOTさんの著作を読む機会を設定できればと思っています(日程調整中)。もうひとつは、東京・東村山にあるハンセン病療養所を歩く機会を持てれば(樹木希林さん・市原悦子さんを偲んで・・・)と考えています。

 

川崎支部 2018年9月例会の報告

 

・日時 2018年9月8日(土)15:00~18:00   

・場所 法政大学第二中・高等学校社会科準備室 参加者は12名でした。 

・「相模原やまゆり園殺傷事件から2年」
 映像視聴:NHK・NEXT未来のために「私は当事者だった~障害者殺傷事件が問いかけたもの~」
 映像を見て考える

 

参加者で見たのはNHKの番組「NEXT未来のために 私は“当事者”だった~障害者殺傷事件が問いかけたもの~」

 

 

 

映像で登場するのは、「犯人の考えがわからないわけでもない」と語る元障害者施設職員、「犯人の考え方を100%非難することができないんですよ」と語る自閉症の息子を持つ母親、「障害があっても普通に生きたい」と語る難病の女性。

 

 

 

参加者からは、「3人の意見はそれぞれみんなわかる」、「事件の背景には職員不足の深刻な状況がある」、「地元の相模原でこの事件そものもを題材にするのは重い。地元だけに消極的。扱うとしたら道徳か」、「偏差値で輪切りされた高校でどうアプローチするか。障害をもった人への差別的な発言を耳にする」、「県立高校でのインクルーシブ教育の状況の課題もある」、「知的障害の人よりも、精神障害の人はなかなか周囲から理解が得られず、社会復帰に難しさがある」、「重度障害者施設建設の話が上がったが、地域で反対運動が起きた。身近に障害を持つ人と接する場があるかどうかは大きい」、「中央官庁での障害者雇用率の不正も、障害者の置かれた現状を物語っている」、「目に触れないと、知らないと偏見を生むことになる」、「授業で取り上げるとすると、行政と福祉・障害者雇用、人権学習のところだろう。学校によっては就職指導(福祉系の就職)でも扱える」、「元施設職員の方が語っていた『私たちの人件は守られているのか』という問いにどう答えるかが求められると思う」、「義務教育段階では、学校に障害をもつ子がいて交流することはとても大切」、「特別支援学校の性教育への攻撃の問題」、「この問題は将来への不安や親の孤立など、いまの社会課題との繋がりから考えたい」など、さまざまな意見交流を行いました。

 

 

 

映像に登場する3人の女性が語る言葉、そして彼女たちの認識の変化。その一つひとつが例会参加者の心に重く伝わってきました。

 

 

 

映像視聴後は、各参加者が持参した資料の紹介と交流を行いました(これも盛りだくさん!)。

 

まず、「考える」こと、そして自分の言葉で語ることが大切なことだろうと感じた学習会でした。

 

 

川崎支部 2018年6月例会の報告

2018年6月16日(土)に川崎支部例会を行いました。参加者は11名(懇親会からの参加を含む)。


1部:授業実践報告
HI
さん「『働くとき』のために~高校生と労働者の権利について学ぶ~」
・レポートは、今夏の京都大会で発表する予定のものです。
・「困難さ」が目立つ生徒たちのほとんどがアルバイトをしています。「非正規労働者」の彼らの暮らしに寄り添えるような授業を展開したい、との気持ちからの実践報告でした。


・昨年度の授業は、

(1時間目)労働問題に気づく。

(2時間目)自分を語り、労働問題に目を向ける。

(3時間目)労働基準法を読む。

(4時間目)労働法クイズに取り組む。

(5時間目)全労連制作のDVDを観る。

(6時間目)社会保険労務士さんのお話を聞く。

説教的に質問をする生徒の姿が見られ、社労士さんのお話は、学校の進路指導部の企画として取り組むことになりました。


・今年度は、

(1時間目)ブラックバイトマニュアルをつくる。

(2時間目)ブラックバイトの対処法を考える。

(3時間目)ジグソー班で調べたことを元に、「これから」について考える。

・生徒たちにとっては、日常の自分自身のことでもあり、授業を受けた感想もとてもリアルでした。権利への目覚めや気づきを大切にしようとする実践者の思いが生徒にも伝わってきます。考えるための資料やワークシートもとても参考になります。

 


・質疑や感想では、「学校として取り組んだことの大切さがある」「学習を通して、権利意識が目覚めることがとても大切」「労基署の役割や機能が十分に果たされているのか」「店長も雇われの身。労働問題全体にどう目を向けていくか」「高校生のなかに成功体験があるといい。声を上げた結果、こう変わったというものを」「職場の労働環境が変わった店の店長に話をしてもらうことはできないか」「『ブラック』という言葉を使うことの是非」など、多くの意見を交わしました。

第2部:参加者もちより
・文学、映画で考える満州開拓、占領下の中国人などを考える文献案内
・光州事件、映画「タクシー運転手」、絵本「今、世界はあぶないのか?」「カラシニコフをミシンに」
・政治経済プリント、堤未果『社会の新人の見つけ方』を読む、障害者差別について考える
・保育所問題を考える授業プリント  など

川崎支部6月例会のお知らせ
支部例会の詳細がわかります。
川崎支部6月例会お知らせチラシ.pdf
PDFファイル 495.3 KB

川崎支部 2018年4月例会の報告

日時 2018年4月21日(土)15:00~
場所 法政二中高・社会科準備室

参加者は10名(懇親会からの1名含む)。

報告1:N1さん(高校)
「日韓両国の未来のために~日韓歴史教育シンポジウムのとりくみ~」として、歴教協日韓交流委員会活動の可能性について報告いただきました。
  これまで行われた公開授業や授業実践交流では、歴史問題について今日的課題からアプローチすること、被害・加害の二項対立的な歴史理解に終わらせないようにする、という共通点があり、その成果の一つが、日韓共同で作成した『向かいあう日本と韓国・朝鮮の歴史』(大月書店、2015)です。
 公開授業や授業交流での生徒の反応・感想を紹介しながら、「両国の子どもたちが未来を見つめ、隣国との平和な未来の担い手になることを望んでいる」とのお話でした。
また、担い手は韓国側が2030代が多いものの、日本側に若手教員がほとんどおらず、世代交流ができない課題もあるそうです。
・質疑では、「慰安婦」や性の取り上げ方、「交流」の先へどう繋げるか(教員同士から生徒同士へ、教室と教室を繋げる試みへ)、二項対立というとらえ方の問題(植民地支配など加害の事実をおさえること)などの質問意見交流を行いました。

報告2:N2さん(中学)
・まず、「ルールの多面的な機能の理解につなげる法教育授業実践研究」の紹介。これは今年9月発行予 定の『法と教育』に掲載される予定の投稿論文の紹介です。最初に採用された小学校での実践をベースに、「小学生が遊びのルールを『作る・使う・作り変える』活動」を、「ケイドロ」のルールづくりを中心にまとめられたものです。
・質疑では、校則をどう取り上げるか、そもそもルールをなぜ守るのかを考えさせるという議論について、法的な安定性の問題、自分たちのルールを社会のルールへどうブリッジさせていくのか、遊びにおいて公正な楽しさとは何か、等々の意見が交わされました。
・次に、「フランス革命の授業」の実践報告(中学校)。非常に限られた授業時間のなかで、風刺画を用いて革命前の社会を考察し、革命で平民が求めたことを考えあう授業報告でした。
・質疑では、ルイ16世を処刑すべきだったのかを考えさせること、中学では時間を十分に取れない中で扱うことの難しさ、ハイチ革命を扱う必要、「平民」をひとくくりにとらえることの問題、などなど多くの意見交換を行うことができました。

各参加者から
・N3さん:地理A学習の導入プリント。ダジャレ満載!
・Kさん:「市議会議員と共に川崎の未来を考える」特別授業の企画案の紹介。高校生議会、請願・陳情などを通して高校生の政治参画の関心を高める取り組み。
・Kさん(木村さん):韓国人元BC級戦犯に向き合う大学生(朝日、2018115日、夕刊)など資料紹介。
・O1さん:中学地理の授業での自校史学習の資料紹介。
・O2さん:戦争と平和の150年、などワークシートの紹介。
・Eさん:子ども食堂の社説を読んで生徒の感想紹介。安田菜津紀さんの写真集『それでも、海へ』『写真で伝える仕事』の紹介。


次回、川崎支部6月例会のお知らせ
6月16日(土)15:00~
報告:Hさん(京都大会レポート)、他

ぜひ、ご参加下さい。

 

川崎支部4月例会のチラシ
支部例会の詳細がわかります。
Microsoft Word - 18川崎支部例会チラシ0421.pdf
PDFファイル 66.3 KB