2020年2月21日 横浜支部第14回例会報告
参加者: 8名
1.多事争論
A:横須賀戦争遺跡を扱った写真集『第56震洋特攻隊と劒崎砲台―原田弓子の遺言写真集―』を、一緒に保存活動をしていた故人の遺志をうけて作成し、完成した。
B:先日小塩海平「満州報国農場とは何だったのか」という講演を聞いた。神奈川県では高校生が調査したくらいしか報国農場のことを調べられていない。
C:生徒共に地域の歴史を調べ発表してきた。学校周辺の里山再生について考えるという授業を地理の先生とともにしている。鉄村のなかで日露戦争で亡くなった砲兵隊の兵士で、蹄鉄の技術を学んでいたらしい。桐蔭学園では探究学習に合わせて、毎年遠足をしている。横浜の初めて探しを今年はした。来年は横須賀探訪もする予定。
D:地域という話が出たので、大学院で地域の村の調査をして生き生きと話してくれたのを思い出す。横浜にいると地域というのを感じない。横須賀学院だと、地域を感じる。小泉家に関するニュースは職員室で必ず話題になる。県立横須賀高校出身者が巷にあふれている。
E:横須賀は中で人が回っている。自由権・平等権・社会権について学ぶ授業内容を関東ブロック集会で報告した。沖縄に行くので、今は平和主義を学んでいる。中村哲さん、積極的平和に結び付けたい。米軍基地があるのは横浜では当たり前の風景。烏帽子岩は昔米軍が砲弾を当てて形が変わった。オリンピックについて学ぶときに、かつて米軍基地がキャンプ村にあったことを話したりしている。
F:育鵬社教科書問題について紹介。
2.Oさん「「歴史教育と地域」を考える社会科教育法プラン~戸山の人骨の謎を追う~」
4月から社会科教育法を受け持つことになり、歴史教育と地域学習を中心にした授業プランを検討しました。
戦後歴史教育の中の地域学習として、社会科発足期(1945~55年)、冷戦体制下(50年代)、高度成長期(60~70年代)、「国際化」期(80年代)、グローバル化(00年代~)に区分して、代表的な実践を紹介しました。
特に、今回は映画『山びこ学校』では「地域」がどう描かれているか、『一本のバナナから』の実践を通じて「地域」を「アジア」にまで広げると何が学べるか、といったことを参加者の皆さんにも考えてもらいました。その際は、特にバナナの実践を教室で行った経験を多くの方がおもちで、課題意識や教室の状況など教えてもらいました。
また、具体的に実践記録を検討しようと、安井俊夫「小さな川に命をかける」、鈴木正気「川口港から外港へ」、難波達興「戦争遺跡・亀島山地下壕の掘り起こし」をよみました。この辺りで時間が来て、充分な検討ができなかったのが残念です。副題に挙げた「戸山の人骨問題」は紹介のみに終わりました。
皆さんに検討いただき、「地域」を取り上げる意味が学生にもわかるように、授業で「地域」をどういう意味で使うのか明確にするようになど、組み立て方の参考となる意見を頂きました。また、ご自身の授業を受けた経験を伺い、授業外の交流の重要性も感じた次第です。
日時 12月6日(金)18時30分~21時00分
場所 県民サポートセンター 703室
内容 【横浜・神奈川から世界を考えるpart.2】
上田誠二さん「「混血児」の戦後史(仮)」
上田誠二さんをお招きして、「神奈川・横浜と混血児」の報告をしてもらいました。
アジアフォーラム全日ということもあってか、残念ながら参加者は多くありませんでした。
しかし、普段の例会などでは知ることのできない、横浜の歴史を学ぶ機会となりました。
今度は大磯を訪れて、上田さんの案内でサンダースホーム、ステパノ学園をフィールドワークしようという計画も立ち上がりました。
報告者は、昨年から横浜高等教育専門学校に勤務されている、上田誠二さん(音楽史・教育史)でした。上田さんが書かれた『「混血児」の戦後史』(青弓社、2018年)では、戦後占領政策の拠点となった神奈川や横浜に多く生まれた「混血児」たちの、その後の成長を取り上げています。主に聖ステパノ学園を主軸に、他の教育社会状況も取り上げられており、彼らの人生に学校教育がどのような役割をはたせたのか、はたせなかったのか、が見えてきます。
日時:2019年10月25日 18:30~21:00
場所:県民サポートセンター703
参加者:9人
内容:
1.多事争論
・中1総合「平和」通信の紹介。
・福島の民俗芸能の沖縄での写真展のようす。東京大空襲戦災資料センター訪問。
・即位パレードと安倍政権。即位礼の報道について。皇族の人生。人権問題として皇族は民主主義の不完全の象徴。
・父親が日系アメリカ人で強制収容が行われ調査したことについて。
・台風報道。
2.KMさん「アジア太平洋戦争中の日本国内における「敵国人抑留」―研究から和解へ」
①報告
敵国人抑留の全体像を掘り起こして判明したこととしては、アジア太平洋戦争開戦前から計画されていて、最初は成人男性だった(第1期)。
外交官の抑留希望があり交換船を行った。136名がいなくなった収容所の空いたところに、新しく女性を含む宣教師らを抑留した(第2期)。
イタリアの降伏後、「裏切り者」としてイタリア人を東京と愛知で抑留し、横浜の居留地の全員立ち退きを機に厚木の七沢に抑留した(第3期)。この頃になると、日本のなかでも食糧難になっている。
1945年、ユダヤ系ドイツ人が抑留される(第4期)。
この他、海外から連行された民間人抑留があったが、当時の政府は隠した。「連行型抑留者」と呼んでいる。総計約1200人で日系人抑留に比べて少ないが、日本社会のために様々に貢献した人々が抑留された。
神奈川に関しては、第1抑留所(北足柄内山)にいた人は、大企業役員、大学の教師など、横浜の居留社会を形成してきた人たち。管理者の恣意的運用により、食糧事情が大変厳しかった。33人中6人亡くなり、1人は鉄道自殺だった。在日型の収容所で志望者を出したのは、神奈川か、そこから移動した秋田のみ。このような敵国人抑留によって、戦後の外国人社会は再建されなかったのではないか。
加害への償いとして出来ることは、後世の人間が調べ、伝えるという活動ではないかと思っている。話を聞くということも大切だと思った。
②検討
・元日本人だけれど、国籍が変わったら抑留したのか。
⇒国籍主義をとった。
・敵国人に限っているのか。フランス人はどうか。
⇒白色ロシア人や、中国人はしていない。南京政府があるから。ビシー政府もあったので、フランス人は抑留していない。
・東南アジアに行って、最初は話もしてくれなかった。話をしてくれて、聞いた以上は出来ることをする。市民学習や学校教育の中で、戦争をいろんな角度から考える一つとして取り上げられたら。第1抑留所のお墓は聞いていたが、具体的なエピソードを聞いて、その人たちを想いだし、つながることができた。
⇒久保田さんの紙芝居が、アメリカに送られた。秘書の人が、6月に日本に来て墓を見に行くと言っている。
・アメリカ軍の捕虜収容所の話などは注目され、記録もある。敵国人抑留と聞くと何の事だろうと思う。
⇒米兵の収容はPOWで積極的に研究している。その中でも敵国人抑留は関心が低い。新聞記事を読んだ北足柄小学校の先生から連絡を受け、今度小学生10人にはなしをしに行く機会がある。
日時・場所 2019年9月27日18:30~21:00 県民センター712
参加者 15名
テーマ 今、沖縄から何を学ぶか?~現地研修事前・事後学習のヒント~
(1)企画趣旨
いま、神奈川にある学校が沖縄を訪れ、何を学ぶのか、ともに考える会を持ちたいと企画しました。
2000年代に研修を実施する学校が増えるとともに、沖縄の抱える政治課題が先鋭化してきた、そんな20年だと思っています。沖縄の今を考えることは、戦後74年がたった今、どう戦争の記憶を継承すればよいのか、21世紀の東アジア情勢や日本社会構造の中で、どういう社会認識を育てればよいのか、といった広がる問題群ともつながるのではないかと考えます。多様な視点から、学びの共有を出来たらと思います。
(2)2019年慰霊の日の現地報道視聴(TMさん提供)
RBC『令和に継ぐシリーズ②地元の証言から沖縄戦を学ぶ、③平和の礎への想い、④戦争を推し進めた教育、⑤天皇制と日の丸』6月18日~21日放送、各8~9分
(3)報告①K学園高校の実践(KTさん・TJさん)
KT:FWは生徒が希望して行先を選択する。沖縄は最も多い。現地研修は3泊4日全て平和学習。沖縄の諸問題を生徒自体が気づき、自分が所属する社会の問題を考えられるようになってほしい。毎年情勢が変わるので、学習を変える必要がある。富士国際旅行社のFさんにアイディアをもらってきており、学校・現地・旅行社の関係が重要だと感じている。
学内に目を向けると、授業者として、今年は二人体制となり、相談して進められるようになってきた。生徒たちは沖縄の人に重ねて考えて欲しいと思うようになるが、逆に沖縄のことを知り続けると、どんどん自分の中で沖縄の人に重なると言えなくなってきている。
沖縄に行く前の生徒は、普天間に行くと、必ずオスプレイの騒音を聞けると思っているが、現地に行くと聞けない時もある。ある生徒は、「きょうは普天間の人にとって静かな一日だったと思った」といったことのなかに、生徒の気づきがあるのではないかと思った。
TJ:もともとは東北に通い、それとかかわる授業が出来たらと思っていたが、職場の事情で沖縄を担当するようになった。事後学習の実践。沖縄の問題を遠い存在においてほしくなくて、自分に引き付けた「責任」を考えてもらうという授業を行った。
沖縄の基地問題について「責任の重さ」を順位をつけてもらった。自分の関心のあった福島の問題に引き付けたいと思ったので高橋哲哉の『犠牲のシステム福島・沖縄』を紹介し、「我々はどんな恩恵を受けているか」考えてもらった。高橋の戦後責任論における「責任」のとらえ方(responsibility)を紹介。
では、沖縄の訴えに対して「応答する」というのはどうすることなのかを最後に考えてもらう。自分が「応答のためのかけた時間の長さ/身近さ」「応答の範囲の広さ/狭さ」を4象限で応えてもらうというもの。生徒の書いたものとしては、応答範囲の狭い例としては、「家族に語ること」をあげ、広い例としては「後輩に語ること」をあげている。長く・広い例としては、「現地の川満彰さんへの手紙」をあげてくれた。狭い・長いの例としては、「自分自身が語り部になること」をあげている。
質疑(部分)
TM:今の責任のところは、認識の問題。自分がどう行動するかという問題。これらをつないでいく時に、個人がどうなのかというのは分かる。4象限や責任の問題はみんなで見られる状況なのだろうか。
TJ:次に資料に特徴的な人をあげたりはしている。なぜというところを掘り下げていはいない。
TM:みんなそれぞれ考え、行動しているが、同じ世代の人が学び合うことで変わっていくという経験をすることが大事だろう。話しているうちに変わっていくであろうと感じる。特に責任というのはすごいので、天皇は、個人的な責任だけではないだろう。
KT:この4月から正式に担当してもらっている。面白いと思ったので、授業してもらった。戦争の責任って生徒にとって議論がなかなかできない。これから考え始めるタイミングで、重たいテーマすぎると思っていた。応答責任という言葉をTさんがもってきてくれて、荷が軽くなった。家族に話せるということでも応答することといえることができたことがよかったと思った。フィールドワークの経験がライフワークになってくれればと思った。
(4)報告②T学園高校の実践(FTさん・IIさん・TFさん)
FT:沖縄は最近始めたもの。女子部が来週沖縄に行くことになっている。歴史担当のTさんと地理担当のIさんが事前学習をしている。
II:桐蔭学園高女子部2年担当している。昨年東北、今年沖縄に行く。東大の空間情報科学について院生指導や、アドバイスをしている。もともとは地理が専門。
白旗の少女でカラー写真にAIを使ってすると、持っているものは何かわかるようになる。1枚の写真の記憶を解凍するとりくみ。白黒だと遠い過去や崇高な存在と思うところをカラーにすることで身近に感じられる。
東大の渡邉英徳先生が定期的にカラー化する記事をTwitter(https://twitter.com/hwtnv?lang=ja)などで上げている。生徒にこの授業では、➀デジタル時代の学びとしてSNSを活用した教材を味わう、②過去・現在・未来との共鳴として、時空間フロー・スケールを感じる、③外部とのつながりを通じて、今自分ができることを考えることを目標にあげた。
4泊5日の修学旅行。「沖縄を学ぶ・考える・楽しむ」を目標にしている。事前学習としては、沖縄新聞記事を集めるところから始めた。冬休みに英語で沖縄を学ぶ『ハートオブオキナワ』(浜島)を読んだ。国内外の10代・20代の人が平和に向けて行っているアクションについて最後紹介し、レポートを書く。4月~10月にかけて朝読の時間を使って、週2回、沖縄関係の記事を読んでもらうことも続けた。
その中で、「記憶の解凍」を取り上げた授業実践の紹介。『戦世からぬ伝言』(http://okinawa.mapping.jp/)が沖縄戦の証言をまとめたものだが、別に渡辺先生がツィートすることで、リプライがある。たとえば「写真にあった「大迫商店」が私の実家」というリプライも。遠いことではなく、身近にあったことと思うのではないか。戦場もきれいな空と緑が分かることで、戦争の怖さを感じる。ガマに火炎放射を放っているところ。記録写真を撮ることに生徒は「米軍は余裕だね」といっていた。
渡邉先生の取り組みでは広島で沢山証言があるが、沖縄は少ない。Yahoo本社で学習会があった。宮本学さんがつくったものとして『消えた女学校』というNHKのサイトも新しくある。広島女学院の庭田さんが取材をしている、つらいできごとを聞くということを取材する。人間関係を構築し、何度も話をして、聞いていく。何十年前の記憶なので、それを呼び覚ますために、写真を見ながら証言を拾っていくというという作業をしている。渡邉さんと庭田さんが国連で発表していた。産業奨励館のカラーの様子。1年後の広島の様子を映したもの。見ているカップルはこれからの広島をどうなるかと思っていたのだろう。
最後に相良倫子さんのスピーチを見てもらう。過去と現在、未来の共鳴作業に取り組む。
質疑(部分)
SC:たくさん写真を撮っている米軍は余裕といったところと、沖縄では行政の管理などどうなっているのか。
II:グレーゾーンになっている。広島ではSGHのお金を使っていた。なぜ、沖縄の証言が途中なのか。広島に比べて沖縄は見られていない。公開も積極的でない。AIでカラー化するには、その技術を持っていた米軍の技術を転用している。米軍のデータはオープンデータ。GISで性犯罪者の位置情報を後悔している。それらの情報量の日米差があって、米軍のものを使うことになる。しかしその量より、庭田さんの取り組みなどから、証言を大切にするような質的な部分を重視している。
SY:生徒の反応はどうでしょうか。現地に行くのにどんな興味を持っているのか。
II:108人いるので、全体的には変化は分からない。沖縄ってショッピングしたかったのに、平和学習するのって言ってた生徒が、NHKの番組をしっかりとみ、リフレクションシートにびっしり書いているようすが、印象的だった。
全体に関して
OT:今日の話だと、どう今の生徒に引き付けられるかと考え実践するところに共通性があった。また、沖縄との出会いをつくることをまず重視し、その後は生徒自身が改めて向き合えればといっていたことも共通する。K学園の卒業生として旅行社にいるYさんはどう。
Y:K学園の出身で、沖縄に行き、富士国際旅行社に入った。韓国に行き、これまで学んだのと違う歴史を自分の肌感覚で学んだことが、大学選択などにつながった。旅行に原点があり、生徒にもそういう経験をしてもらいたい。
O:富士国際旅行社は創業 50周年たった。『日本の一番長い日』の宮城事件に出る柳澤康雄が初代社長。情報が進んでも、現地に行き学ぶことが大切なのだということで旅行社を作った。ある新聞社に本社はたたかれたが、その時、お世話になっている学校や沖縄の人が助けてくれた。今度、コスタリカから弁護士を招く予定。憲法の話がたくさん出ているので、沖縄の人たちと一緒に経営理念について考えたいと思う。証言者のかたがいなくなって、どう引き継いでいるかと考えている。現場のなかから声を拾うことが大事なので、また呼んでください。
日時 2019年6月14日(金) 18:30~21
場所 県民サポートセンター
参加者 7名
内容 今回の例会も、実践報告を主体として行いました。
1.多事争論と近況報告
2.Fさん「どっちの歴史ショー~ICT活用で歴史的思考力を育む~」
「どっちの料理ショー」に倣って、どっちの歴史をあなたは選ぶか?と生徒に問いかける授業。「どっちも歴史?どっちの歴史?」と分けて考えると、「どっちも」では歴史を多面的・ 多角的にとらえさせる取り組み。教科書は一面的な書き方なので、「多面的・多角的」といわれても、なかなかなじまない。「どっちの」では、歴史的に思考・判断・表現するということを目指す取り組み。
具体的には、徳川綱吉の生類憐みの令を人権保護か人権侵害かという視点で裁判させた。日露戦争では現在からの視点、当時の国民の視点、と立場を明確にさせて、防衛戦争か侵略戦争か考えさせた。普通選挙の時に政友会、民政党、無産政党のスローガンを読ませ、当時の有権者としての立場性をはっきりさせて投票させる。いずれも予告問題で定期考査で出題した。「蘇我入鹿殺人事件」では、中大兄皇子を殺人罪とするかどうかという歴史法廷。ここではあえて視点は示さず、考えさせるという取り組みで、盛り上がった。
今回の報告の中心実践は、「鎖国の功罪を裁く歴史法廷~家光は有罪か?無罪か?」というもの。功罪をその後の歴史への影響をそれぞれ紹介(和辻哲郎や徳富蘇峰の意見なども)。クラスごとで生徒の答えは有罪無罪わかれる。これまでは起きたことしか教わっていないが、IFも検討する必要があるだろう。例えば原爆が落ちていなかったらと考えてみる必要がある。「いつかの歴史」学習=「画期的な歴史」学習と銘打ち、「画期を考える」歴史学習に取り組んでいる。「15年戦争、いつなら止められたか?いつなら引き返らせたか?」という問いでは、帰還不能点3か所考えさせる。最近は「どこでも歴史」学習と銘打った地域の歴史を掘り起こす学習を地理の先生と共に計画中。
〇次のような質疑がなされました
「普通選挙で生徒が女性として考えて間違いになったのはなぜ。間違えたことで気づけることがあったので良かった。」「授業とテストの具体的な様子は?今後共通テスト化になってどうなる?」など、様々な質問が出されました。「日露戦争で自衛戦争という生徒は、どれくらいいるのか」という質問には、「半分くらいいる。地図を見て矢印が大陸の方に行くのを見て「侵略」と書く生徒がいる。3問目を入れられたら、中国朝鮮の人ならどう見るかと聞きたい。生徒は、死者の数で侵略かどうかを判断する場合もある。」など、中学生の視点の紹介がありました。また「昔の歴史は昔だけではないということを生徒に考えさせることが大切だが、鎖国から太平洋戦争までつなげると飛躍ではないか。」という意見に対し、「昔のことを今の自分とつながっていると考えさせることの大切さをいっている。開国までしていたら、そこから敗戦までつなげられると思うが。」という返答がありました。
3.Oさん「中学生による主体的な発表学習づくり~「20世紀の戦争と平和」を主題として~」
中学1年の社会科で「世界」を学ぶ3学期に生徒の発表学習を組織している。テーマは「20世紀の戦争と平和」。ここ数年間取り組んできたが、今年度は原爆投下を日本だけでなくアジアやアメリカの視点からとらえたり、労働者の視点から1920年代のアメリカをと絶えたりというテーマ設定をした。また、総合学習では戦争学習からSDGsを盛り込み、現在の平和問題を考えるという内容にもしている。生徒の意見文を紹介しながら、これからの学校や歴教協などで、どのような生徒の学びの在り方や戦争と平和の問題に取り組み方を模索していったらいいか考えた。
〇質疑
「体験者の話はどのように聞く機会があるか」といった質問が出されました。また感想で、「神奈川学園の実践の蓄積を感じる」「このような実践は中1だからできたのでは」といった発達段階に関する意見が出されました。
日時 2019年5月10日(金) 18:30~21:00
場所 県民サポートセンター 参加者:7名
1.多事争論
最近取り組んでいることなどを報告と議論をしました。
●明後日の本田由紀講演会や26日県総会の松本茂雄さん講演会に向けて準備をしている。どう松本さんの思いを受け止められるか考えている。
●加害の記憶展に取り組んだ。加害の問題も聞ける最後のチャンスではないか。映像を撮ったので教材として使えるように記録化したい。松本さんの講演も映像として残し、活用方法を考えたい。自分たちは加害の戦争をしたということを扱わないといけない。
●GWに空襲の聞き取りに行った。30代の研究者に「体験者に頼っていたのではないか。私たちはその体験を語ることを怠っていたのではないか。」と言われた。私たちの言葉に直して、確実に伝える方法を考えないといけない。港南台の署名を該当依頼したら、「意味は分かるが、署名は嫌だ。あとでどう使われるか心配。」政治にかかわるからといって忌避する時代が心配。
●POW研究会のことを上海のTV局が東京裁判について調べている(すでに3本出来ている)。桐蔭に法廷の取材にきた。社会科の教員とその若いスタッフで交流会を企画したら学校から不許可になったのがショック。撮影はさせるが、加害の問題に目をそらすのは。学校の体制が変わりアクティブラーニング実施が強化されている。現在、共学化のはざま。共学化された高校で教えていると、公立から来た生徒はおとなしくていい子だが、生きてる感じがしないのはどうしてだろう。
●担任を1か月やっていい生徒がいるなあとしみじみ感じている。
●学校のAL型卒業1期生は進学実績がよくなく、基礎学力をつけるべきだといわれだした。
●ALと入試問題に相関性がない。入試をかえないと。
●横須賀の貝山地下壕保存する会のメンバー(会の代表は亡くなった)。来年4月に地下壕を公開する予定。アクション追浜が中心にガイド養成などの準備をしているらしいが、順調にはいっていないようだ。震洋(水上特攻艇)の2つの部隊の基地が三浦市にがあった。そのうちの1つの本部となった寺と砲台跡の写真を撮った亡くなった会長が、写真集を出してほしいと言っていたので、出版の準備を進めている。
●「元号」問題をどう授業にするか(時間内に話せず場外で情報交換)。
2.夏のレポート報告
①YN「絵本の中の障がい児・者」
現在グループホームや障害者地域活動でパートで働き、「障がい者が地域で生きるとはどういうことか」考えてきた。差別解消とかいうが表面的な印象。テレビ番組もあるが、絵本で障がい者のことを知ることは出来ないかと思い調べてみた。写真によってその子の生活を取り上げているものもあるが、実在の人や写真で出てくるのは外国人作家が多い。自伝や創作などもある。多くの作品は美化もしていないし、祭り上げることもなく、淡々とでも温かい目で障がい児(者)のことを教えてくれるように私には思える。障がいのことがわからないから、差別や拒否が起こる。精神障害など分かりづらいものは絵本で伝えてもらえるといいと思った。まず一通り読んでみて、自分の文章で紹介する資料集を作りたい。すべての障がいが紹介されているのか。授業だとどういう位置づけで使うことができるか。
<質疑>
・一番障がいのことを伝えているという絵本があるか。
→『見えるとかみえないとか』が、違いを認めるということに伝えているのが面白い。自閉症当事者が書いた『自閉症の世界』が当事者が見て理由がわかるという(当事者に関しては『僕が飛び跳ねる理由』も最近有名)。
・お勧めの本がリスト化されていると、道徳の授業や公共の授業などですぐに使おうと思える。
・数さえあれば、現代社会の授業でドンドン読ませて、自分に引っかかったものを感想書いてもらうというのができる。生命倫理のテーマで。障碍者差別の問題など絡めて取り組めたら。延々と回し読みをするように。生徒によって何が引っ掛かるかちがうので。
・Nさんが整理して、タイトルを手掛かりにまとめた。図書ボランティアを越えた取り組み。こういう観点で本をまとめた、というのを初めて聞いたので、すごい発表だと思った。
・出来れば普段絵本に触れないので、テーマごとにまとめられるとおもしろい。小学校の支援員をしている人が、個別生徒に付きっきり。教員にもきれいごとで終わっているので、こういうまとめかた。カラーがいい。
・ペーパーレスの時代だから、HPなどで残せたら。かなれきHPでパスワードかけて紹介したら。絵本は中高生は普通では読まないので、展開など新鮮。
・絵から入るというのが、高校生でもいい。
・車いすに入る経験など中高でやる。それと絵本を組み合わせたら。
・絵本も中身は深い。中に書いてあるのは何か、そこから読み取るのは読み手しだい。中高生だから読める読み方がある。
・退職年は理科をしていた。すごい面白かった。指導書を読んでもよく分からなかった。地層の勉強をするときに、子ども用の本を6冊読めばわかるようになると書いてあった。結構分かったという感触があった。難しいのをやさしく書いてある。
②OT「中学生の主体的な発表授業-「20世紀の戦争と平和」を主題として」
時間が足りなく、前提となる神奈川学園に特徴的な中学社会科の取り組みを紹介した。オリジナル資料集を作成し、中学1年生で世界の地理と歴史を学習している。自校史教育など織り交ぜた総合学習を展開し、体験学習に取り組んでいる。次回、発表授業の実践に焦点を当てて追加報告をする。
<質疑>
教科書を使わないことに、生徒保護者からどういう声があるか。
→特に心配といった声は寄せられていない。肯定的なものが多い。
世界史の人が作っているので、ナチス悪者、日本人が被害者という構図になっている。
→戦争学習は中1から高2までの必修で毎年している。確かに中1では被害者という意識が強化される。しかし、中2で日本史として加害の歴史を扱い、中3で終わらない戦争の問題を扱っている。
・いつ何を教えるかという点で、かつて高校部会では、長島保さんが「小学校が被害、中学校で被害と加害があると気付かせる、高校では加害を重点に構成する」といった。
・私も参加していたが、その言葉を、そうはいっても長島さんの場合、中学校でも加害を知らせるだけでなかったのではないか、と捉えている。
・最近、林博史さんが「沖縄からの無差別爆撃を扱わないといけない」といっている。沖縄はベトナム戦争への基地ともなっているので、そこでつながっている。
・中学生にとって、このオリジナル資料集はイラストとか風刺とかを沢山にしているのがいいと思う。昔の人もこういうものなのかとかとりつきやすい。たくさんの中で面白いのをヨーロッパのとらえ方を中心に(近代化の取り上げ方)ピックアップの仕方がとても上手。
4月13日(土)に川崎支部と横浜支部の合同例会を行いました。
参加者は懇親会からの方を含めて15名。
(1)小川輝光さんの著書『3.11後の水俣/MINAMATA』を読む。
まず、SKさん(T学園小学校)からのコメント。
3.11後の状況を、水俣と世界との繋がりや関わりを意識して広い視野から描いており、新鮮な水俣病像が示されていること。
疑問点として、(1)当事者の関わり方について、構造的な加害者としての視点が強い印象を受けるが、潜在的被害者の視点が弱いのは何故か。加害者としての自分、被害者としての自分という側面のとらえ方。(2)日本社会との関係があまり見えてこない。なぜ水俣の教訓が日本社会で生かされなかったのか。(3)「歴史学的に」(第3章)と「歴史する」との違いとは何か、などの課題が示されました。
次に、ASさん(H中・高等学校)からのコメント。(1)企業の加害性と市民運動との関係から、市民の変容をどう考えるのか。(2)「歴史総合」における近代化、大衆化、グローバル化との関わり。
コメントを受けて、小川輝光さん(神奈川学園中・高等学校)からのリプライ。
① まず、本を書くまでの経緯の説明から。勤務校での実践。さまざまな人との出会いから、水俣の教訓とは何だろうかと考え、実践をかたちにしたいとの思いが湧いたこと。なぜ、同じことが繰り返されるのか、生徒とともに悩むなかで加害の視点を考えるようになったこと。また、歴史教育者協議会や東京歴史科学研究会、歴史学研究会、横浜の自由社教科書批判の取り組みなどの経験が背景にあること。
② コメントに対しては、①市民運動とは違う伝統的な水俣の世界、「死民」(石牟礼道子)の視点へのこだわり。②「開発」や「欲望」という課題にどう向き合うか。欲望をかき立てる資本主義の課題を押さえたい。③「歴史する」ことで見えてくることを意識して、第3章は教科書的に記述している。④大衆、市民、民衆といった概念については、生徒をどう歴史の主体として考えるかという課題につながるなどのお話でした。
全体の質疑では、
①子どもにとって水俣病は「遠い」存在ではないか。加害者意識まで至らない生徒へのアプローチをどうするか。(→子ども、健康、いのちを守るという視点から考える。ふるさとを奪われたこと、慰霊碑の存在など、原発問題の構造と同じものがあるのではないか)。
②近代化をどう捉えるか。高度成長や新自由主義と水俣の関係をどうみるか。(→資本と人間の関係。「死民」のような石牟礼の描く前近代的世界。大衆社会の中での新興財閥と植民地、企業城下町。1970年代における民衆運動と田中正造を評価する動き。帝国的グローバルの課題、グローバル企業と人、土地、環境の関係)。
③工場・原発誘致と疎外・差別の問題、国策に翻弄される人びとと開発の問題。
④自分に何が出来るか考えようという授業スタイル。「自分」に戻り行動を促すかたちの問題(→道徳、歴史総合の課題でもある)、等々。
最後に小川さんからは、語らない人びと、語り得ない人びと、死んだ人びとの声をどう想像するか。ということの重要性を語られました。
(2)その他、情報交流
・Nさん:公園の利用ルールと解決策についての中学校での実践が、神奈川新聞(2019.4.2)とタウンニュース(2019.4.11)に掲載された。
・Oさん:県総会・記念講演会のお知らせ
・Kさん:イラク戦争と子どもたち(高遠菜穂子さん)、映画『家に帰ろう』など。
参考までに、これまで小川さんが書かれた水俣関係のものをあげておきます。
・「フィールドワーク研修の事前学習として水俣をどう学ぶか」『歴史地理教育』785(2012年2月)
・「水俣と出会った高校生たち」『歴史地理教育』800(2013年2月)
・「高校生の社会認識形成に関する質的研究」『社会科教育研究』121(2014年3月)
・「社会科における公害学習の焦点」『社会科教育研究』133(2018年3月)